ゴルフと上手に付き合う身体づくり~症状・疾患別コンディショニング~五十肩とゴルフ肩だけを動かそうとしていませんか?胸椎・肩甲骨まで見る身体の使い方
第5回 五十肩とゴルフ
肩だけを動かそうとしていませんか?胸椎・肩甲骨まで見る身体の使い方
「バックスイングで肩が痛い」
「トップまでクラブを上げにくくなった」
「フィニッシュで腕を上げるのがつらい」
「ゴルフだけでなく、服を着るときや背中に手を回すときも痛い」
40代、50代以降のゴルファーでは、このような肩の悩みを抱える方も少なくありません。
その中でよく使われる言葉が「五十肩」です。
ただし、五十肩という言葉は日常的な呼び方であり、肩の痛みすべてを指す診断名ではありません。いわゆる肩関節周囲炎や、強い可動域制限を伴う凍結肩(癒着性関節包炎)など、状態によって原因や対応は異なります。
特に凍結肩では、肩の痛みとともに、自分で動かした場合だけでなく、他人に動かしてもらった場合にも可動域が制限されることが特徴の一つです。症状は数か月から年単位で続くこともあります。
そのため、
「肩が痛いから、とにかくストレッチすればよい」
とは限りません。
ゴルフを続けるためには、まず肩そのものの状態を把握したうえで、
肩関節だけではなく、肩甲骨・胸椎・体幹まで含めて身体の使い方を考えること
が大切です。
五十肩とは?
一般的に「五十肩」と呼ばれる状態では、
腕を上げると痛い
腕を後ろに回しにくい
夜間に肩が痛む
上着を着る動作がつらい
髪を洗う、結ぶ動作がしにくい
肩の動く範囲が狭くなる
といった症状がみられることがあります。
特に凍結肩では、肩関節を包んでいる関節包が厚く、硬くなり、肩の動きが大きく制限されることがあります。AAOSでは、症状が強くなる「freezing」、硬さが目立つ「frozen」、徐々に動きが戻る「thawing」という経過で説明しています。
重要なのは、
肩が痛いからといって、必ず五十肩とは限らない
ということです。
腱板損傷、石灰沈着性腱板炎、変形性関節症、頚椎由来の症状などでも肩周囲に痛みが出ることがあります。
痛みが強い、夜間痛が続く、急激に力が入らなくなった、しびれを伴うといった場合には、自己判断せず整形外科などで状態を確認することが重要です。

なぜ五十肩は起こるのか?
凍結肩の正確な原因は、すべてのケースで明確になっているわけではありません。
肩関節を包む組織に炎症や線維化が起こり、関節包が硬くなることで痛みや可動域制限につながると考えられています。
また、
40~60代
糖尿病
甲状腺疾患
肩の手術後
外傷後
長期間肩を動かせなかった状態
などでは発症リスクが高くなることが知られています。
ただし、
「姿勢が悪いから五十肩になった」
「肩甲骨が硬いから五十肩になった」
と単純に説明できるものではありません。
身体づくりで考えたいのは、五十肩そのものをトレーニングで治すことではなく、
肩の状態を踏まえながら、ゴルフ動作で必要以上に肩へ負担を集中させないこと
です。
ゴルフでは肩をどのように使っている?
ゴルフスイングでは、肩だけを単独で動かしているわけではありません。
例えばバックスイングでは、
股関節↓骨盤↓胸椎・胸郭↓肩甲骨↓肩関節↓腕
というように、身体全体の動きが組み合わさります。
そのため、肩関節の動きが制限されている状態でも、身体は何とかクラブをトップまで運ぼうとします。
ここで代償が起こります。
肩が動かないと、身体は別の場所で補おうとする
① 腰を反ってクラブを上げる
肩や胸郭が十分に動かないと、
「もっとトップを高くしたい」
という意識から腰を反って腕を上げることがあります。
すると、
肩が上がらない↓胸郭の回旋量が不足する↓腰を反る↓クラブを上まで持っていく
という動きになります。
見た目ではクラブが上がっていても、
肩の動きが改善したわけではありません。
むしろ腰部へ負担が移っている可能性があります。
② 骨盤ごと大きく回る
胸椎や肩周囲が動きにくいと、上半身を回すために骨盤まで大きく回してしまうことがあります。
ある程度の骨盤回旋はゴルフに必要ですが、
胸郭と骨盤を分けて使えなくなると、
スウェイ
バランス低下
切り返しのタイミングの変化
などにつながる可能性があります。
③ 肘や手首でクラブを持ち上げる
肩が動きにくい状態でも、
「以前と同じトップを作ろう」
とすると、肘を強く曲げたり、手首を使ったりしてクラブを持ち上げる場合があります。
その結果、
肩をかばったはずが、肘や前腕へ負担が移る
ということも考えられます。

「肩が上がらない=肩だけ伸ばす」では不十分
肩の可動域を回復させるための治療や運動は、症状の時期や程度によって異なります。
凍結肩では運動療法や可動域練習が用いられますが、痛みが強い時期に無理な運動を行うのではなく、状態に応じて負荷を調整することが重要です。NHSも、肩を完全に動かさないことは勧めない一方で、自己流の強い運動は避けるよう案内しています。
※英国の国民保健サービス(NHS: National Health Service)
つまり、
痛いのに無理やり伸ばせば早く治る
というものではありません。
そしてゴルフへ戻ることを考える場合には、
肩関節そのものに加えて、肩を助ける身体機能も確認していきます。
ゴルフを続けるために確認したい4つの身体機能
① 胸椎の回旋
まず重要なのが胸椎です。
バックスイングで上半身を回すとき、胸椎が回らなければ、その不足分を肩や腰が補おうとします。
例えば、
胸椎が回らない↓肩をさらに後ろへ動かす↓肩関節への要求が増える
ということがあります。
肩に不安があるゴルファーほど、
「肩をどこまで回せるか」だけでなく「胸郭をどこまで回せるか」
を見ることが重要です。
② 肩甲骨の動き
肩甲骨は、腕を動かすための土台です。
腕を上げるときには、上腕骨だけでなく肩甲骨も一緒に動きます。
そのため、
肩甲骨を完全に固定して腕だけを大きく動かそうとする
のは自然な動きではありません。
ゴルフでも、
バックスイング
切り返し
フォロースルー
フィニッシュ
を通して肩甲骨は位置を変えます。
肩関節だけを動かそうとするのではなく、
胸郭の上で肩甲骨が適切に動けるか
を見る必要があります。
③ 体幹の安定性
肩甲骨は胸郭の上にあります。
つまり、その胸郭や体幹自体が不安定であれば、腕を安定して動かしにくくなります。
例えば、
腕を上げるたびに腰を反る。
腕を後ろへ動かすたびに身体全体が傾く。
このような状態では、
肩の動きを体幹で代償している
可能性があります。
肩を自由に動かすためにも、
体幹が土台として安定すること
が重要です。
④ 股関節と下半身
肩の記事なのに股関節?
と思うかもしれません。
しかしゴルフは全身運動です。
股関節で身体を支えながら骨盤を回旋できなければ、上半身にも余計な動きが必要になります。
特に肩が動きにくい人では、
下半身から使える動きを増やし、上半身だけに仕事を集中させない
という考え方が重要になります。
五十肩だから「肩を使わないスイング」にする?
ここも注意が必要です。
肩が痛いからといって、
「肩をまったく使わず身体だけで振る」
ということはできません。
ゴルフでは肩も腕も必要です。
大切なのは、
肩だけに仕事を集中させないこと。
です。
股関節。
骨盤。
胸郭。
肩甲骨。
肩関節。
腕。
それぞれが役割を持つことで、特定の部位だけが頑張りすぎる状態を減らしていきます。
肩に不安があるゴルファーにおすすめしたい身体づくり
※肩そのものの運動については、診断や症状の時期によって内容が変わるため、医師・理学療法士などから運動上の指示を受けている場合はそちらを優先してください。

① 胸椎回旋
骨盤を安定させた状態で、胸郭を左右へゆっくり回します。
目的は、
肩を無理に後ろへ引かなくても上半身を回せる身体を作ること。
です。
腕を胸の前で組むなど、肩に負担の少ない姿勢から行います。
② 下半身を安定させた胸郭回旋
軽く前傾姿勢を取り、股関節で身体を支えながら胸郭を回します。
ゴルフのアドレスに近い姿勢で、
下半身で支える+上半身を回す
能力を作ります。
③ パロフプレス
ゴムバンドやケーブルに身体を回されそうになる力へ抵抗します。
体幹を安定させることで、
肩や腕を動かすための土台
を作ります。
肩が痛い場合は、腕の位置や負荷を無理のない範囲に調整します。
④ 股関節を使ったヒップヒンジ
股関節から前傾姿勢を作ります。
ゴルフでは前傾姿勢を保ちながら回旋するため、
腰や肩で姿勢を作るのではなく、股関節で身体を支える
ことが重要です。
「以前と同じトップ」に戻す必要はある?
五十肩を経験したゴルファーほど、
「昔と同じ位置までクラブを上げたい」
と考えることがあります。
しかし、
トップが高いほど良いスイングになるわけではありません。
年齢や身体の状態が変われば、無理なく使える可動域も変化します。
肩の状態によっては、
トップを少しコンパクトにすることで、
痛みを避けやすい
バランスを保ちやすい
再現性を作りやすい
場合もあります。
身体にスイングを無理やり合わせるのではなく、
今の身体で再現できるスイングを考える
ことも、「ゴルフと上手に付き合う」という考え方の一つです。
痛みがある状態で無理に打ち続けない
肩が痛くても、
「振っているうちに温まれば大丈夫」
と考える人もいます。
しかし、
夜間も強く痛む
徐々に動かせる範囲が狭くなっている
日常生活にも支障がある
腕に力が入りにくい
急に肩が上がらなくなった
転倒や外傷後から痛い
しびれを伴う
といった場合は、自己判断で練習を続ける前に医療機関で確認した方がよいでしょう。
凍結肩は自然経過でも改善することがありますが、回復には長期間を要するケースがあります。
五十肩と上手に付き合うとは
肩が痛いと、
どうしても、
「肩をどうにかしなければ」
と考えます。
もちろん、肩そのものの診断や治療は重要です。
しかしゴルフへ戻ることを考えると、
肩だけを見るのでは足りません。
胸椎が回るか。肩甲骨が動くか。体幹が支えられるか。股関節で身体を受け止められるか。
身体全体が役割を分担できれば、
肩だけでスイングを作る必要はなくなります。
美ライトフィットネスでは、五十肩そのものの診断・治療は行いません。
医療機関での診断や運動上の注意点を踏まえたうえで、
胸椎回旋
肩甲帯の動き
体幹安定性
股関節可動域
ヒップヒンジ
バランス
ゴルフ動作での代償
などを確認します。
同じ「肩が上がりにくい」というゴルファーでも、
必要な身体づくりは同じとは限りません。
肩を無理に動かすのではなく、
肩が頑張りすぎなくてもスイングできる身体を作る。
そして、
今の身体で無理なく続けられるゴルフを考える。
それが、五十肩と上手に付き合いながら、長くゴルフを楽しむための身体づくりです。

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