ゴルフと上手に付き合う身体づくり~症状・疾患別コンディショニング~テニス肘・ゴルフ肘、肘に負担を集中させないための身体の使い方
~症状・疾患別コンディショニング~
第4回 テニス肘・ゴルフ肘
肘に負担を集中させないための身体の使い方
「クラブを握ると肘が痛い」
「インパクトの瞬間に肘へ響く」
「練習した翌日に、物を持つだけでも肘が痛い」
このような症状に悩むゴルファーは少なくありません。
ゴルフで起こりやすい肘のトラブルとしてよく知られているのが、いわゆるテニス肘とゴルフ肘です。
しかし、名前だけを見ると、
「テニス肘はテニスをする人」
「ゴルフ肘はゴルファー」
に起こるものと思われがちです。
実際には、ゴルファーでもテニス肘になることがありますし、ゴルフをしていない人でもゴルフ肘になることがあります。
重要なのは競技名ではなく、
肘のどこに、どのような負担が繰り返しかかっているのか
ということです。
そしてゴルフの場合、その負担は肘だけで作られているとは限りません。
足元、股関節、骨盤、体幹、胸郭、肩、腕、前腕、手。
本来は身体全体でクラブを動かします。
その連動が崩れると、本来は身体全体で処理するはずの力を、前腕や肘が過剰に引き受けることがあります。
テニス肘・ゴルフ肘とは?
一般的に「テニス肘」と呼ばれるのは、上腕骨外側上顆炎です。
肘の外側には、手首を反らしたり、指を伸ばしたりする筋肉の腱が集まっています。
これらの筋肉や腱へ繰り返し負担がかかることで、肘の外側に痛みが出ることがあります。
一方、「ゴルフ肘」と呼ばれるのは、上腕骨内側上顆炎です。
肘の内側には、手首を曲げたり、前腕を回したりする筋肉の腱が付着しています。
そこへ繰り返し負担が加わることで、肘の内側に痛みが現れます。
代表的には、
テニス肘
肘の外側が痛い
物を持ち上げると痛い
手首を反らすと痛い
ペットボトルやカバンを持つと痛い
タオルを絞る動作で痛い
ゴルフ肘
肘の内側が痛い
強く握ると痛い
手首を曲げると痛い
インパクトで肘の内側に響く
前腕に力を入れると違和感が出る
といった症状がみられます。
ただし、肘周囲には腱だけでなく、関節、靱帯、神経などもあります。

痛みの場所だけで「テニス肘」「ゴルフ肘」と自己判断するのではなく、症状が強い場合や長引く場合には医療機関で状態を確認することが大切です。
なぜテニス肘・ゴルフ肘は起こるのか?
テニス肘・ゴルフ肘は、単純に「肘を使いすぎたから」だけで起こるわけではありません。
多くの場合、
前腕の筋肉や腱への繰り返し負荷が大きく関係します。
例えば、
同じ動作を何度も繰り返す
強く握り続ける
手首を頻繁に曲げ伸ばしする
急に練習量が増える
筋力や持久力以上の負荷をかける
といった状況では、前腕から肘にかかる負担が増えます。
腱は筋肉から骨へ力を伝える組織です。
そのため、
筋肉が繰り返し強く働く↓腱へ繰り返し力が伝わる↓回復より負荷が上回る↓痛みや機能低下が起こる
という流れが考えられます。
つまり問題は、1回だけ強い力がかかることではなく、
「負荷」と「回復」のバランスが崩れることです。
ゴルフで肘へ負担が集中しやすい主な原因
① グリップを強く握りすぎる
最も分かりやすい原因の一つが、グリップ圧です。
クラブを強く握るほど、前腕の筋肉は強く働きます。
しかもゴルフでは、一瞬だけ握るのではありません。
アドレスからスイング、インパクトまでクラブを保持し、それを何十回、何百回と繰り返します。
例えば、
「クラブを飛ばされたくない」
「フェースを安定させたい」
「ミスしたくない」
という意識が強くなるほど、無意識に握力が上がることがあります。
その結果、
強く握る↓前腕が緊張する↓手首が硬くなる↓前腕の筋・腱への負担が増える
という状態になりやすくなります。
② ダフリやマットへの打ち込み
ゴルフでは、クラブがボールだけでなく地面にも接触します。
特にアイアンショットでボールのかなり手前から地面へクラブが入ると、クラブヘッドが急激に減速します。
その衝撃は、
クラブ↓手↓前腕↓肘
へと伝わります。
芝ではある程度衝撃が逃げますが、硬い練習マットでは衝撃を強く感じることもあります。
そのため、
ダフリが多い
強く打ち込む
練習場で大量に打つ
という条件が重なると、肘への負担が増える可能性があります。
③ 練習量が急に増える
腱は筋肉と比べて、負荷への適応に時間がかかります。
例えば普段50球程度しか打っていない人が、急に200球打つ。
あるいは、
「ゴルフを久しぶりに再開した」
「急に週3回練習するようになった」
といった変化でも、身体がまだ負荷に適応していない可能性があります。
つまり、
身体の能力 < 練習量
になれば、肘に限らずトラブルが起こりやすくなります。
ゴルフでは「たくさん打てば上達する」と考えたくなりますが、
回復できる量を超えて練習することが、必ずしも上達につながるわけではありません。
④ 手や腕でクラブを操作しすぎる
身体の回転がうまく使えないと、クラブを手や腕で動かす割合が増えます。
例えば、
胸椎が十分に回らない↓
バックスイングが作りにくい↓
腕でクラブを持ち上げる
あるいは、
股関節や体幹が安定しない↓
インパクト位置が毎回変わる↓
手首や前腕でクラブフェースを調整する
ということがあります。
この状態では、前腕の筋肉がスイング中ずっと働きやすくなります。
つまり、
肘が痛いから肘を見るだけではなく、
なぜ腕でクラブを操作しなければならないのかを見ることが重要です。
⑤ 肩や肩甲骨が安定していない
腕は肩関節だけで身体につながっているわけではありません。
肩甲骨を通して体幹につながっています。
肩甲帯が不安定だと、腕を動かす際に前腕や肘で余計な調整をする場合があります。
例えば、
肩がすくむ
腕だけでクラブを上げる
肩甲骨が安定しない
インパクトで腕が突っ張る
といった動きです。
肘は、身体からクラブへ力を伝える途中にある関節です。
そのため、上流にある肩や体幹がうまく働かなければ、肘が余計に頑張ることになります。
⑥ 道具が身体に合っていない
身体だけでなく、クラブやグリップも確認する必要があります。
例えば、
グリップが細すぎる
グリップが太すぎる
グリップが摩耗して滑る
クラブが重すぎる
シャフトが硬すぎて力む
アイアンを必要以上に打ち込んでいる
などです。
特に古くなって滑りやすいグリップでは、
滑らないように無意識に強く握ることがあります。
肘の負担を考える際には、
身体 × スイング × 道具
の3つを分けずに考えることが大切です。
「肘が痛い=肘が弱い」とは限らない
肘に痛みがあると、
「肘周りの筋肉をもっと鍛えればいい」
と思われることがあります。
もちろん、前腕の筋力や持久力は重要です。
しかし、
胸椎が回らない
肩甲帯が安定しない
体幹が不安定
股関節で身体を支えられない
手首でクラブを操作している
という状態では、肘を鍛えるだけでは負担の原因そのものが変わらない可能性があります。
つまり、
肘が弱いから痛いのではなく、肘が頑張りすぎている
場合もあるということです。
ゴルフを続けるために確認したい4つの身体機能

① 胸椎の回旋
ゴルフでは上半身を回旋させる必要があります。
胸椎が十分に回らなければ、
腕だけでクラブを上げる
肩を無理に回す
手首でクラブを操作する
といった代償が起こりやすくなります。
肘への負担を減らすためにも、
腕が頑張りすぎなくても身体を回せるか
を確認することが大切です。
② 肩甲帯の安定性
肩甲骨は、腕と体幹をつなぐ重要な場所です。
腕を動かしたときに、
肩がすくむ
肩甲骨が浮く
上半身が崩れる
ようであれば、肘や前腕へ余計な負担がかかる可能性があります。
腕を自由に使うためには、
肩甲骨が適切に動きながら安定すること
が必要です。
③ 体幹の安定性とセパレーション
ゴルフでは、骨盤と胸郭がそれぞれ役割を持ちながら動きます。
体幹が不安定だと、クラブを正しい位置へ戻すために手や腕で調整する量が増えます。
すると、
身体全体で振る↓手で合わせる
というスイングになりやすくなります。
骨盤を安定させながら胸郭を動かせるか。
下半身から上半身へスムーズに力を伝えられるか。
こうした身体機能も肘への負担と関係します。
④ 前腕の筋力と持久力
もちろん前腕そのものの機能も重要です。
ゴルフではクラブを何度も握り、手首をコントロールします。
そのため必要なのは、
一瞬の握力だけではなく、繰り返しクラブを保持できる持久力
です。
ただし、痛みが強い状態で無理に握力トレーニングを行えばよいわけではありません。
症状に応じて負荷を下げ、必要に応じて段階的に負荷を戻していくことが大切です。
肘に不安があるゴルファーにおすすめしたい身体づくり
① 胸椎回旋エクササイズ
骨盤を安定させた状態で、胸郭を左右へゆっくり回旋します。
ポイントは、
腰や腕で無理に動かさず、胸椎から回ること。
上半身の回旋を腕だけに頼らない身体を作ります。
② パロフプレス
ゴムバンドやケーブルに身体を回されそうになる力へ抵抗し、体幹を安定させます。
手で力を出しているように見えても、実際には足元・骨盤・体幹を使って姿勢を保ちます。
身体から腕へ力を伝える土台づくりになります。
③ 肩甲帯の安定化トレーニング
ローイングなどを使い、
肩をすくめない
肩甲骨をコントロールする
腕だけに力を集中させない
状態を作ります。
肘だけでクラブを支えるのではなく、肩から体幹まで使える状態を目指します。
④ 前腕への段階的トレーニング
症状が落ち着いてきた段階では、手首の曲げ伸ばしなどに軽い抵抗をかけ、前腕へ段階的に負荷を戻していくことがあります。
重要なのは、
痛みがあるから完全に使わない
でも、
痛くても鍛え続ける
でもありません。
状態を見ながら、適切な量の負荷へ戻していくことです。

練習量の管理もトレーニングの一部
肘の痛みがあるゴルファーにとって、
「何を鍛えるか」
だけでなく、
「どれくらい打つか」
も非常に重要です。
例えば、
100球を一気に打つのではなく、途中で休憩する。
痛みが出た後にさらに50球打たない。
フルショットだけでなく、アプローチ練習を混ぜる。
連日大量に打たない。
こうした負荷管理も身体づくりの一部です。
痛みがある日はスイングで無理に解決しない
肘が痛い状態で、
「身体で振れば治る」
「手を使わなければ大丈夫」
と考えて、強引にスイングを変えるのはおすすめできません。
症状が強いときは、
球数を減らす
フルスイングを避ける
硬いマットでの練習量を減らす
痛みが増えるクラブを無理に使わない
必要であれば休む
といった判断が必要です。
痛みを我慢して練習することが、必ずしも上達への近道とは限りません。
このような場合は医療機関へ
肘の痛みがあっても、すべてがテニス肘・ゴルフ肘とは限りません。
特に、
強い腫れがある
安静時にも強く痛む
肘が十分に曲げ伸ばしできない
手や指にしびれがある
握力が急に低下した
転倒や衝突後から痛みが続いている
負荷を減らしても改善しない
場合には、自己判断で運動を続けず、整形外科などの医療機関で状態を確認することが大切です。
テニス肘・ゴルフ肘と上手に付き合うとは
肘が痛くなったとき、
「肘を休ませれば終わり」
ではありません。
もちろん症状が強い時期には負荷を調整する必要があります。
しかしゴルフへ戻るためには、
なぜ肘へ負担が集中したのか
を見ることが重要です。
握りすぎていないか
練習量が急に増えていないか
ダフリを繰り返していないか
胸椎は回っているか
肩甲帯は安定しているか
体幹から腕へ力を伝えられているか
クラブやグリップは身体に合っているか
これらを確認することで、肘だけに頼らない身体の使い方を考えることができます。
美ライトフィットネスでは、テニス肘・ゴルフ肘そのものの診断や治療は行いません。
医療機関での診断や運動上の注意点を踏まえたうえで、
胸椎の回旋
肩甲帯の安定性
体幹機能
骨盤と胸郭のセパレーション
前腕の筋力・持久力
グリップ時の力み
ゴルフ動作における代償
練習量や身体への負荷
などを確認し、肘だけに負担が集中しにくい身体づくりをサポートします。
肘を守るために必要なのは、
「肘を使わないスイング」を作ることではありません。
足元から体幹、肩、腕、前腕までがそれぞれ役割を果たし、
肘だけが頑張りすぎない身体をつくること。
それが、テニス肘・ゴルフ肘と上手に付き合いながら、長くゴルフを楽しむための第一歩です。
まずは、
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